藁の盾　【三池崇史監督】

映画館で鑑賞。

予告で三池監督の名前があったので公開が待ち遠しかったです。
見る前の印象はアメリカ映画の「ＳＷＡＴ」っぽいかなくらいでした。

アイディアは「ＳＷＡＴ」のそれと同じですね。
テレビで脱獄協力者に賞金を宣言して、ＳＷＡＴメンバーと街の荒くれものとの戦いを描いたアクションドラマ。
対してこちらは、どうしようもないクズ、清丸国秀を守ろうとするＳＰと警察のドラマ。賞金の出所は孫娘を惨殺された富豪。その権力と資金を使ってメディアと警察を裏から操って社会的にこのクズを殺そうと１０億円の賞金をかけます。暗殺犯を雇ったらいいんでない？なんて突っ込みがあってなるほどと思いましたが観てるときは気にならず。逆にこの劇的なドラマがどう転がっていくかが楽しみでした。もしかすると富豪である蜷川は、この事件の前にも幼児を虐殺していた清丸を仮出所させて再犯の機会を与えた司法にも恨みがあったのかもしれませんね。司法を金と権力で無力化する。これは劇中では成功していて一般市民も警官もお金欲しさに清丸に襲い掛かります。まさに法律国家が崩れていく姿です。

賞金と犯罪者というアイディアは似てますがドラマの展開は別物です。
上に書いたように日本の法律と犯罪被害者の心情から起きるドラマが中心で、そこに犯罪者を守るドラマではなく、法治国家として私的な賞金レースから被疑者を守り法治国家の最後の砦として葛藤する警察のドラマです。

こう書くと社会派ドラマ色が強くなりそうですがそこは三池監督。
目に入る人間全員が信用できない！この連続と護送メンバーも含みがあって誰も信用できない状況の連続。そこにドラマチックの移動手段が加わり娯楽作の要素が充分盛り込まれます。特に新幹線のシーン。日本で新幹線を止める撮影できなかったので台湾で同タイプが運用されていたので台湾で撮影するこだわりっぷり。ちなみに移動手段でヘリ使えばとありまして、あ、なら簡単っぽいと思いましたが東京ー福岡は飛行できませんし、飛行場でちゃんとできないこと回収してましたね。

そして、清丸のくずっぷり。
てっきり冤罪事件も絡むのかと思ってましたが最低最悪の犯罪者で変質的で死罪にならないなら代わりに私が・・・と思うほどの救いようのないクズ。藤原さんが演じたカイジとは別ものの最低の人間。

この男を守ると考えると耐えられません。
上に書いたとおりです。私的な賞金で被疑者が殺されれば法治国家が成り立たなくなります。
法律は平等なんて言葉がありますが最近はこの言葉は信じれません。殺された人間と殺した人間が本当に平等に扱われているのか？そう聞かれたなら私は否と答えるでしょ。しかし、法律があるから日々の生活が守られてるところもあるわけで。これが崩壊すれば終わりです。無不地帯で生活していく勇気は私にはありません。
銘刈と白岩たちが守ろうとしたのは犯罪者ではなく法治国家と自分たちの信条、誇りを守ろうとしていたわけです。このドラマが重かったです。鑑賞後に時間がぴったりだったので「リンカーン」も見て帰ろうと思いましたがとても続けて映画を見る気になはなれず。しばらく色々考えました。記事にしても相変わらず上手くまとめきれません。

救いはラストカット。原作は未読ですが原作とは違うらしいそうです。原作はどんだけ救いないんでしょ・・・
幸せとはいえませんが救われるラストの画でよかったです。

総評：★★★★★
映像 （4）　構成力・展開 （4）　脚本（4） 役者 （5）
演出力 （5）　キャラクター （5）　オリジナリティ（4）
五段階評価です

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