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Channel: 映画を観る日々
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バードマン あるいは(無知がもたらす予期せぬ奇跡) 【アレハンドロ・G・イニャリトゥ監督】

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映画館で鑑賞。


今年のアカデミー賞受賞作。
受賞の対抗馬は「アメリカンスナイパー」。こちらは劇場で鑑賞済み。その強い反戦テーマと娯楽の部分をミックスした素晴らしい作品で、今年はこちらだろうと読んでました。ふたを開けるとびっくり。アカデミー賞逃しても見ていたとは思いますが。やっはり受賞で鑑賞モチベーションはアップしたました。




【あらすじ・解説】『バベル』などのアレハンドロ・G・イニャリトゥが監督を務め、落ち目の俳優が現実と幻想のはざまで追い込まれるさまを描いたブラックコメディー。人気の落ちた俳優が、ブロードウェイの舞台で復活しようとする中で、不運と精神的なダメージを重ねていく姿を映す。ヒーロー映画の元主演俳優役に『バットマン』シリーズなどのマイケル・キートンがふんするほか、エドワード・ノートンやエマ・ストーン、ナオミ・ワッツらが共演。不条理なストーリーと独特の世界観、まるでワンカットで撮影されたかのようなカメラワークにも注目。[Yahoo 映画]



まずは。
この映画は世間の感じるコメディでは無いと思います。コメディの解釈も幅がありますのでコメディと言われればコメディですが。私の思うコメディは声を出して笑える部分があるところ。もしくは明るい映画なのでこの作品は当てはまりません。


監督が監督なのでその手の演出はしないでしょうし。私の中でこの監督は“社会派”なイメージがありましたので。
そう考えると、この監督にしては砕けたセリフややり取りがあるのでコメディなのかな。


そんな映画の定義は見る人の感想にお任せまして。



この映画の凄みはそこではありません。


全編長回しというおっそろしい技法で撮られた作品の点!


なんか凄いの?と聞かれると困るところなんですけども(笑)
近年の映画は短いカットで、例を挙げると。
あるセリフを喋る、カット。カメラの向きを変えて別の役者のセリフ。カット。場所を移動したので外観の映像。カット。室内で別のセリフカット。
などなど。作品のリズムを生むためにいくつもの映像を繋げる編集が主流です。リズム以外にも役者の表情を活かすためにアングルを変えたカットを挟んだり。アクションシーンですと迫力を増すので短い映像を繋げたりします。
こういうカットを繋げる映像の編集はもう一つ利点がありまして。
一つの失敗の影響が少ない点。もしセリフを噛んでしまった、忘れてしまった。ならば、そこだけもう一度撮影すれば修正できます。
し・か・し。
この長回しですと、一つの失敗で全てオジャンになりますので一から撮影しなおしです。役者はもちろん、裏方も緊張感マックス。本番中にくしゃみでもすればアウト!ですから。キャスト、スタッフの緊張感も伝わってきてたかも。やっぱり一発勝負!となると緊張感も集中力も違いますから。そういうヒリヒリした部分はあったと思います。
新しい技法ではなく、昔からある技法で、こういった作品は過去何度か作られてますが。近年は稀になってますので観る側の私にもいい緊張感がありました。いつ一息入れるシーンがあるのか?とオープニングから探ってましたら延々に続くワンカット撮影。途中でカメラが横に振るパーンがあり編集店らしいところはあるんですけど、その後にまた新しい長回しが。
劇中では4日?5日?ほど経過してるはずですがどんどんと話が進みますので日付の変わりに一休みするタイミングもなし。
そもそもいつ日付が変わったのか?なんて最初は戸惑うほど進んでいきます。

あ、これはもう一気に見るしかないのか。と開始3分くらいで悟り気合を入れなおしました。

この長回し、慣れてない人にはしんどい映画だと思います。
ちょっとの見逃しも許されない舞台劇よりも(は言い過ぎかな)ライブ感のある作品ですので。
この効果もあってどんどんと主人公リーガンに共感ではないか。ちょっと共感しづらいキャラでしたので。心情がリンクしていく。こっちがしっくりきます。絶望感、閉塞感、喪失感みたいのが心に充満していきます。



もう一つ厄介なのが音楽。
ドラムメイン(今年はドラムメインの映画で良作が早くも2本!)で脳の直接響く圧迫感(笑)
長回しで脳が完全にキャラクターとリンクし始めることにドラムがなり始めどんどん圧迫されていきます。これは私にはいい緊張感だったんですけどダメな人にはダメっぽく。のほーほんとした映画ではなく。あくまでも喝采という愛を求め、舞台の成功と名声を求める男。しかし、もう名声は以前得ていて、あと何を求めるんだ?!とい心の声との葛藤という圧迫感があるのであってる音楽と思います。好みは分かれるとは思います。



そしてストーリー。
中身は、役者の葛藤という心情の物語。
劇中の舞台劇「愛について語るときに我々の語ること」にリンクしているようなリンクしていないような展開。

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ラストとかリンクしてますよね?その目の先と、求めてるものは違うものでしたが。上の写真はラストとは違います。けどちと関係してるのか?!


もう一つの面は。
劇中でも言われてるロックバスター映画へのアンチテーゼの部分もあるのかな。

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それは製作サイドのみならず観客に対しても。突如始まる巨大モンスターと軍の戦闘シーンを見せて「これでいいんだろ?」は突き刺さります。
映画のみならず、舞台に対してもかな。スター俳優と呼ばれた男が舞台に進出するのを嫌う批評家。彼女は批評家と呼ばれ人々(私みないな末端も含むのかな(笑))に対してもチクリ。
もう一つチクリはSNS世代。賞賛を受けたいならヒット作を作るよりも動画をアップしたほうが早いよ。しかし、その熱は昇るのも早いが一気に冷める。これは監督の作品を見てみろ!って叫びなのかな。なんて勝手な私の推測ですが。


ストーリーは色々な解釈もできますが。
作りこまれた映像と編集でこれだ!という形をみせた監督。
しかし、ラストシーン、ラストカットで全部を見せないことで余白を作る憎い演出。
「あのラストカットで視線の先に映るのは何?」
ここは観客が自由に想像できる部分を残してます。


あとはキャスト。
キャスティング勝ちしてる映画でもあります。
「バットマン」で一躍スターの一人になったマイケル・キ-トン。

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途切れることなく、コンスタントに出演作はありますが。ヒット作との距離は感じる俳優。映画のキャラ・リーガンも「バードマン」以降、ヒット作が生まれず、映画から舞台に移り、一発当ててやる!を虎視眈々と狙う男。バードマンとバットマンで観客の気持ちもリンクして実に見事です。


舞台で演技、演出で対立するのが、舞台で名声を得ているマイク。演じるのはE・ノートン。

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やっぱり上手い。その表情のみならず空気まで一変するのはさすが。


リーガンの娘サムにはエマ・ストン。

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相変わらず可愛い(笑)達者な二人の囲まれても見事長回し、長セリフをこなしてました。控え室でSNS動画の件でリーガンと喧嘩するシーンは表情も鬼気迫っていてよかった。ほんと今後が楽しみ。ラストの表情もよかったな~



久々に長い文になりました。
予想した通りにまとめ切れず(笑)
だらだらとした文になっております・・・


なんでしょう。
凄い映画!って書いても陳腐ですし。何が凄いの?ってなりますし・・・


ああ、いいのがあった。
アカデミー賞受賞が納得の映画。
アカデミー賞も世論に寄った作品や、持ち回り?で受賞した作品か?なんてありますが。


この映画は演出、キャスト、映像、脚本と全てが揃った作品です。

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NYの臨場感もよかったです。



総評:★★★★★
映像 (5) 構成力・展開 (5) 脚本(5) 役者 (5)
演出力 (5) キャラクター (4) オリジナリティ(5)
五段階評価です

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