フライト　【ロバート・ゼメキス監督】

映画館で鑑賞。

予告を見て公開は知ってましたがあまり乗り気ではありませんでした。
なんか実際に起きた飛行機事故、裁判もののよう、監督が最近はアニメ作品でしか名前を見てないので最近の調子がどうも。
そして、大好きなデンゼルさんもまたいい人か。ＤＶＤでいいかな、と思ってましたがたまたま見た「スマップ×スマップ」でゲスト出演されていて場の盛り上げ方が上手いな～と改めてこの人はヒトとしてやっぱ魅力的だな～と思い外れでもいいから見に行こうと劇場へ。だって、にらめっこなんてこの人が真剣に笑う気がないならずっと堪えれそうなのにすぐ笑ってにぎやかにしてたりとかサービス旺盛すぎでしょ（笑）

多分、映画会社のミスリードでいつもなら騙された！と憤ってるところでしたが、それを上回るドラマで最後まで楽しめました。

実話ものではまずなく、これは予告でも触れてないのでこちらの勝手に勘違いした私ですが、ほかにもそう思ってた人もいるようで、グーグル検索すると「映画　フライト」のあとは実話が表示されてました（笑）
墜落事故のシーンを作るのに実際の事故から参考にしたことはありましたが物語は実話と違うそうです。

あとは墜落後の主人公ウィップの状況。
予告の感じだとウィップの操縦のおかげで助かったのに事故の裁判でアルコールが検知されて裁判で不利になり・・・助かった人の嘆願書で・・・もしくは航空会社との戦う裁判系を想像してましたが中身はまったくの別物。
なんと、この映画はアルコール中毒者の話です。
そう、ウィップは謀略とか関係なくただのアル中。
冒頭で寝起きに一杯、そのままフライトするのでネタバレでもなんでもありませんので。
航空事故は副産物的なもので、ウィップとお酒の話です。このドラマが実に深く最後まで見られます。問題は途中からウィップのことが嫌いになること（笑）悪人役もいくつかされてますがキャラクターとしては魅力ある役を演じることが多かったデンゼルさんがこれでもか、とダメ人間を演じてます。アル中の一番やっかいなところは自分の状況を理解していないこと。酔っ払いが明らかに酔ってるのに酔ってないよ、なんて言う感じで自分ではアル中となかなか認めない。そして、この映画だと周りの人間が親切なのにそれを裏切る。予告の感じだとドン・チードルは会社側の敵役と思ってましたが意外にもそうではなく、そうそうデンゼルさんとついに初共演最高！と思いましたが絡みが少なくまたの共演お待ちしてます。会社側もなんだかんだ労組が頑張ってたりとウィップを助けようとしてくれます。なのに、彼はお酒を手放すことができず・・・

もう、最後の裁判シーンなんて「ウィップお前は助かるな！」なんて映画の主人公には相応しくない私の中で嫌われっぷり。
しかし、最後の最後で勇気のドラマがありました。あのシーンとあのシーンはあそこでは浮いてたのにここに繋がるのかなんてゼメキス監督作品にしては意外に伏線はってたりして。宗教系は余分だった気もしますが。伏線とまで言わないかもしれませんが盛り上げとして良かったんです。ドラマと言っても予告で期待させるような感動ドラマではありませんので悪しからず。

デンゼルさんこの人ありきの映画でもありました。この方の上手さなんでしょうね。この人の演技は説得力はありすぎです。褒め言葉ですけど詐欺師でも成功しそう。誰にも疑われることなく最後まで信じ込ませることができそうな方。なんだかんだいい人が続いてまして、そちらも似合っていいんですけど、今回はほんとにダメ人間を演じてていい意味で裏切られました。

ゼメキス監督の評価も一変。
飛行機の墜落シーンは予告見て助かるの解ってるのにドキドキしちゃいました（笑）
そしてラストに繋がるシーンの連綿。やっぱ実話ものよいオリジナル話でどんどん作品が見たいです。
これは勝手な想像ですけど・・・この映画別に飛行機でなくても良かったんですよね、事故シーン。アル中の話なので交通事故でも良かったんでしょうけど飛行機を監督が撮りたかったのかな～なんて邪推してます（笑）監督はＶＦＸで実験的なことをしたい派だと思ってますので。

もう一つ余談ですが。
監督とお話を見るとこの作品はトム・ハンクスが鉄板ですよね。仲たがいした話も聞いてませんし。
スケジュールが合わなかったのかな。もちろんデンゼルさんの演技が最高だったのでトム・ハンクスを希望とかの話ではなく。この前に見た「ジャンゴ」から考えまして。デンゼルさんがこういう役だと一昔前なら人種差別問題が絡んできそうですが今回はそういう話は一切なく。人種問題ではなくアル中の話として描かれてました。一昔前のような問題はなくなったとは思いませんが少なくなったんだな～とフトこの文を書きながら思いました。

総評：★★★★☆＋
映像 （4）　構成力・展開 （5）　脚本（4） 役者 （5）
演出力 （4）　キャラクター （3）　オリジナリティ（4）
五段階評価です

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ネタバレ込みの余談ですが。

ラストのシーンですが。
あれはまだお酒が周りにない状況なのでいいんですけど、アル中の本当の戦いは別荘から出た後。
手が届くところにお酒があるときに耐えられるかどうか。そこはこの映画の求めたのとは違うので描く必要はない話ですけど。息子との仲も改善されたのでいい方向に向かうと思えるラストと信じたいです。劇中では散々裏切られてるので（笑）