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リンカーン 【スティーブン・スピルバーグ監督】

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映画館で鑑賞。

近年のスピルバーグ監督作品で「面白い」と口から素直にでることが無かったので鑑賞する気にはなれず。「戦火の馬」もいまだに観ておりませんし。
気になるのはダニエル・デイ=ルイスの演技。予告の数カットを見ただけで、ダニエル・デイ=ルイスにリンカーンがのりうつっているように見えましたので。

【あらすじ・解説】巨匠スティーヴン・スピルバーグによる、第16代アメリカ合衆国大統領エイブラハム・リンカーンの伝記ドラマ。奴隷制の廃止と禁止を強固なものにし、泥沼化した南北戦争を終結させるため、憲法の修正に挑むリンカーンの戦いを重厚なタッチで映し出していく。『ゼア・ウィル・ビー・ブラッド』などのダニエル・デイ=ルイスがリンカーンにふんし、国と人民の未来をめぐる理想と現実に苦悩する彼の胸中を見事に体現。『50/50 フィフティ・フィフティ』のジョセフ・ゴードン=レヴィットら、脇を固める実力派の妙演も見逃せない。[Yahoo 映画]


日本ですと黒船が来た、攘夷と維新だ倒幕だ、と叫んでいた幕末後期。文献はありども、映画はまだ出来ておりませんので写真がいいところですが、ダニエル・デイ=ルイスの動き喋り方は本物のリンカーンのよう。幕僚に力強く命令する口調、電報技師の前で優しく語り掛ける口調、そして猫背の歩き方。見たことないのに本当にこんな人だったのだろと見えてしまいます。この人の演技だけでも一見の価値は充分あります。
共演者も演技者揃い。サリー・フィールドも、ジョセフ・ゴードンも宇宙人ジョーンズも。スピルバーグが今までの人脈を駆使してこの大河ドラマを作り上げようとした意気込みが見えます。


戦争映画は数あれど未だに映画作品が数少ない南北戦争と奴隷解放について正面から勝負して、政治ドラマに仕上げ、しかもスリリングなドラマに仕上げたのはさすがスピルバーグ監督。そして、その彼のもとに見事な演技派が揃いしっかりしたドラマ映画になっています。ただタイトルの割にリンカーンは何を思っていたのかがぼやけてしまったようにも見えました。

鑑賞した人の多くがレビューで書き込んでます点のもう一つ。
予備知識がないと難解になる可能性が大です。説明はありますので観ていると政治家の立ち居地とかが見えてきますが「なぜそうなのかは」は多少予備知識がないと。特に奴隷解放は当たり前でなぜ反対する人がいるのかは今の人にはわかりづらい部分かもしれません。


では、映画全体の評価としては。
緻密で丁寧に描かれた素晴らしい政治ドラマです。結末は知ってるはずなのにドキドキできます。
奴隷解放の13条修正のため、下院の可決に必要な20票差を埋めるため1票を集める駆け引き。
リンカーンの所属党である共和党内でも反対派がいる(ブレア派)。賛成派には急進すぎて危険な存在(スティーブンス派)
反対派の民主党以外にも修正案への壁があり、そしてもう一つの大きい壁。
それが南北戦争。
戦争終結の動きが修正案の可否に繋がってくるのでこちらの展開も物語に大きく関わってきます。戦争が終結してしまうと修正案が否決されてしまうので。北部側も解放一色ではなく、奴隷制維持派が多いので戦争終結を駆け引き道具に使わないといけない状況でした。なぜ戦争が駆け引きになるかはアメリカの南北の対立から知らないといけません。
奴隷解放の面もありますが経済的な対立の面もあったりと一つの決裂ではなく根深い対立があったりしました。この戦争の背景の知識が少ないとこの映画が解りづらくなる原因にもなるかもしれません。

余談ですが。
鑑賞の前に新聞でリンカーンの手記、手紙が見つかった記事を見まして。彼は奴隷解放について否定的な文章が見つかったとか。やはり政治、経済駆け引き、特に南部、英国との。これらに対して奴隷解放を使って上手く北部をまとめてたのかもしれません。ただ当時の状況についての識者の方の解説も載っていました。当時は奴隷解放などを文面で残すことは憚れた背景もあった、そうです。やはり今とは時代の空気が違ったんでしょうね。

映画の話からどんどん離れてすいません。
話を映画に戻しまして。
この映画はリンカーンの心情についてはあまり描かれていないのです。
ここが私が観ていて物足りなく感じた面です。
かの人物像についてダニエルが見事に演技で表現されましたが彼の心情についての言葉はあまり無かったです。上に書いた電報技師の前で語ってたシーンくらいでしょうか。あとは奥さんとの喧嘩のシーンくらい。これは家庭内の話なのでまた別で。
私が聞きたかったのは、なぜ、リンカーンは可決の難しい13条修正に心血を注いだのか。今の視点ですと奴隷解放は当たり前ですが、当時は否決の可能性のほうが大きかった背景があるのになぜ政治生命を賭けて挑んだのか。リンカーンマニアなスピルバーグならそこも描いてくると思いましたし、原題も「リンカーン」なのでもっとリンカーンの心情が描かれてるものを鑑賞前に期待していました。しかし、観てみると政治ドラマは面白いのにこの部分は薄味で物足りなかったです。
急進派のスティーブンスが代弁してるようにも見えましたがスティーブンスは別の視点、別の政治信条があったようですし。
アメリカだけでなく、日本にも伝わる奴隷解放の父といわれるリンカーンなのでその部分は今更必要ないと判断したのか。そこを描くともっと長くなってしまうのでカットしたのかもしれません。

150分の尺が長く感じてしまいました。
恐らく、最後に書いた物足りない部分が影響しました。
映画としてはオススメの1本です。


総評:★★★☆☆+
映像 (4) 構成力・展開 (4) 脚本(4) 役者 (5)
演出力 (5) キャラクター (4) オリジナリティ(4)
五段階評価です


総評はあくまでも個人的な評価です。
映画の質は下の個別での評価とおり素晴らしい出来ですので。


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